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ンティブの在り方と参加のコストである。
もちろん、市民セクターは営利団体を指すものではないため、組織従属のインセンティブが金銭的な報酬によらないことは明白である。それよりも、ボランティア組織でのインセンティブは、その社会的貢献から得られる満足、充実感、あるいは組織内の水平的ネットワークから得られる情報、等であると考えられている。ここではそれが一体何であるのかに言及することはしないが、それらのインセンティブが機能するための前提条件を提示したい。それは参加のコスト、すなわち、時間的コスト、空間的コスト、能力・体力的コストとの裁定である5)。つまり、市民セクターの被管理階層のインセンティブが機能するための前提条件(f)とは、
f={Periodical cost + spatial cost + physical cost + capability}/personal satisfaction of volunteeringであり、f≦1の方程式が成立する場合に、ボランティア活動に対するインセンティブがはたらくと考えられる。しかしこの方程式が成立したからといって、当然全ての市民がボランティア活動に参加するわけではない。あくまでも前提条件に過ぎない。ここで提示した参加コストの概念は、金銭的に計量可能なものだけを指すのではなく、ボランティア活動にともなうあらゆる次元の犠牲(sacrificed matters)を総括して指す。問題なのは、f>1の場合である、そのような場合にこそ、行政からの何らかの支援、連携が必要なのである。f≦1とならない状況下でも、ボランティアニーズは発生するし、またボランティア需要も発生する、1995年の阪神大震災、1997年の日本海重油流出事故、等の災害時に全国からボランティアが集結して活動したことは、こうした前提条件が成立しない場合でもボランティアに対する需給がオプティマイズされることを立証したのである。だがこうした場合でも、行政が何らかの支援策を施さなければ、f>1のままボランティア活動が継続され、市民が多くの犠牲をはらってまで、ボランティア活動を継続していることになる。それを行政はもっと認識すべきであろう。緊急災害時に限らず、日常生活の中での市民セクター活動においても同様である。

 

(2) 資金管理
市民セクターの資金管理について特筆すべきは2点ある。1つは、資金の調達元とサービスの提供先が異なる場合が多い点である。市民セクターでは営利活動が目的ではないため、その出資者は特別の見返りを期待することはできない。あくまでもその団体の活動の

 

 

 

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